北欧の光と暮らし ― フィンランドを巡るインテリア旅
北欧デザインの本場フィンランドで見つけた、
光と木と布が織りなす美しい空間。
それらをインテリアコーディネーターの視点でお届けします。
第一章【Artek本店訪問レポート】
アルヴァ・アアルトの息吹を感じて ― Artekヘルシンキ本店へ
レポート①【入口編】-北欧デザインの原点に触れる空間―

多彩なペンダントライトがグラフィカルに吊り下げられた印象的な光のエリア。白、黒、グレー、真鍮、セラミック…等の
フォルムや素材の違いが重なりながらも、どこか共通する「静けさ」が感じられるのは、Artekらしい統一感のなせる技。


正面には、壁面にずらりと並んだスツールのカスタマイズサンプルたちが視界に飛び込みます。これは「Stool Customisation Workshop」の案内スペース。
円形の座面や脚のパーツがパネル展示され、まるでカラーパレットのよう。ブランドの「選ぶ楽しさ」と「使い手の個性」を尊重する思想が、入り口からすでに表現されています。
レポート②【カラーテーマ別ダイニング展示】― “教科書の椅子”たちと暮らす、色彩の空間へ ―
エントランスを抜け、右手の通路へ進むと、ショーウィンドウ越しにも見えていた展示エリアが目の前に広がります。そこは、まるで色のストーリーが紡がれるダイニング空間。
■ 3つのテーマカラーで構成されたダイニング空間

【ブルーゾーン】手前
淡いペールブルーのEamesチェアと、ブラックのワイヤーチェアが静かに対話する一角。
テーブルは白×チャコールグレーのツートーン。静寂の中に洗練を感じる、北欧らしいミニマルな美しさが印象的
【イエローゾーン】中
イエローグリーンのワイヤーチェアが軽やかに浮かび上がるゾーン。
ナチュラルな木のテーブルに、ストライプのテーブルランナーがアクセントとして映え、春のような爽やかさを感じさせます。イエローグリーンのワイヤーチェアが軽やかに浮かび上がるゾーン。
【レッドゾーン】奥
こちらは、大人の温もりが感じられるバーガンディ〜テラコッタ系のトーンでまとめられたゾーン。
赤のファブリックチェアや、チェックのプレースマットが空間にリズムを生み、どこか懐かしさと安心感を漂わせています。
大ぶりの和紙照明がやさしく光を落とし、空間全体が柔らかな雰囲気に包まれていました。背後の透け感あるカーテンが、日差しをフィルターのように柔らかく変えてくれて印象的でした。
「色」を通じて家具を感じる展示演出
この展示は、単に家具を並べるのではなく、「色の力」でストーリーを与える手法がとても秀逸でした。
椅子一脚のシルエットや素材の違いも、色という共通言語の中で並べられると、調和しながらも個性が際立って見えてきます。

Chair 66/69 | Alvar Aalto | Zebra 張り |

Armchair 400 | Alvar Aalto | シープスキン風 |

Armchair 401/406 | Alvar Aalto | ロッキング風 |

Armchair 400 | Alvar Aalto | ゼブラ柄・濃色 |

Wiggle Side Chair | Frank Gehry | 段ボール製 |

Panton Chair | Verner Panton | 赤茶色成型椅子 |

各スペースに教科書で見た名作椅子を「今の暮らし」に自然に溶け込ませている点に感銘を受けます。
ほしい!と思わせる工夫がところどころに織りなされており、中でも自身も最後まで購入を悩んでいたものが
90周年記念コラボ【ムーミン✖スツール60】です!


レポート③【2階編】― 実用と審美が交差する、プロフェッショナルのための空間 ―
1階の展示空間から階段を上がると、そこはより“現実に近い”インテリア提案がなされた実務・商談スペース。ただ美しいだけでなく、実際に使いこなす・選び取るという視点が強く表現されたフロアでした。
■ 椅子展示コーナー:名作と新作がフラットに並ぶ

壁面いっぱいに設けられた椅子ギャラリーでは、デザインや時代、素材の異なる椅子たちが一列に並び、それぞれの造形や存在感を比較できます。
たとえば…
- 左上2脚は、おそらくHans J. Wegnerなどの北欧名作アームチェア(Yチェアに近い意匠)
- 中段にはイタリアンレザーのような座面を持つスチール×レザーのバウハウス系チェア
- 一番右下にはシンプルながら洗練された無垢木材の折りたたみチェア
これらが同じ高さで展示されることで、「デザインの純度」そのものをフラットに比較する視点が生まれていました。
■ 商談エリア:素材と向き合うための空間

奥の一角スペースは、ファブリックやレザーなど素材選定の場。壁面一面に生地サンプルが美しく整然と並び、
中央にはタイル貼りのワークテーブルと、黒いチェアの組み合わせ。
この空間は完全に**「選ぶ」ための場所**として設計されていて、デザイナーや施主が実際に手に取って、光の下で比較できる工夫がなされていました。
(机上にはサンプル帳と、製品図面のようなプレゼン資料も)
■ Vitraコーナー:Eames Lounge Chairの名作展示

チャールズ & レイ・イームズによるラウンジチェア(1956)が象徴的に展示。
名作にふさわしい品格のあるレザーとシェルの曲線美、そして床のモロッカンラグとの対比が美しく、“住まいに迎える”家具としての理想形が提示されています。
横には選べる革サンプルとフレーム(アルミ仕上げ)のオプション展示も。
このフロアは、まさに**「暮らしのなかでどう選ぶか」**を問うための空間。
観光ではなく、インテリアのプロとして訪れる意味がある場所と感じました。
しかも日本人スタッフの方が案内をしてくださったので、とても楽しく学ぶことができました。
その他、小物などもたくさん販売しています。