コラム

フィンランド旅 5つ星ホテルで見つけた4センチの美学

前回のブログでは、ヘルシンキの5つ星ホテルで出会った「洗練された空間」がいかに私の完成を揺さぶったのか、その背景にあるデザインの美学を紐解きました。今回はホテルの客室の空間に焦点を当ててみたいと思います。

NHコレクション ヘルシンキ グランドハンサ

STAYROOM -目に見えない設計が生む印象

宿泊したスーペリアクラスの客室。まず目を引いたのは、天井や壁を這うように描かれた極細のライン照明。

わずか4センチ?ライン照明の役割

ライン照明の配光(光の広がり)が線を引いたよう。それによって空間が締まって見えます。

思わず懐をメジャ―で測ってみます。

4センチ?!

日本で多く採用されているのは15センチです。日本の住宅では、お部屋全体の明るさを確保したいという意識が強い為、コーブ照明であっても配光(光の広がり)が大きくなりがちです。しかし、この部屋では、配光がシャープなため、ペンダントライトの配光が際立っています。

この空間を通して私のライティング計画の考え方―「必要なところに光を配置し部屋を構成する」という標準がが、まだまだこれには及ばないと学びました。

また、施工性も関係していています。日本のハウスメーカーの施工は、完全効率化UPの為、クロス屋さん、大工さん、電気屋さんが分業。そのため15センチは必要なのでしょう。

この部屋はライトはおそらくテープライトを使い、クロスでもなくアゴの部分はオーダー建具ですね。しかも段差がついて、デザインされているところが素敵!

このシャープなラインによって、ペンダントライトや家具、壁の陰影が際立ち

‘必要なところに光を、余白を残す,

という設計思想が、空間そのものを構成していました。

小さいだけではない、北欧インテリアのミニマル思想

次に、このアングルどう感じますか?

床の木目とドア枠、そして額縁の色がきれいに揃っています。その中で小さく黒のアクセントが効いている。

近づいて驚きです!スイッチとエアコンパネル、ブラケット照明でした。

スイッチとエアコンパネルはお揃いで、わずか9センチ。

ブラケットは座が小さく丸く、ブラケットのスイッチとともにデザイン性が高い。

ミニマル(装飾をそぎ落とし、シンプルで本質的、それによって素材を引き立てる)インテリアがこの空間には息づいています。

それはトイレの洗浄スイッチにも表れています。小さいほうを「小」で大きい方を「大」とし、ミニマルデザインとなっていました。日本ではわかりやすく文字で表記されていますが、ここでは形だけで伝えています。

文字を排除したシンプルなデザインは空間をより静かに美しく見せています。

伝える情報量を減らすことで、感じる美しさを増やす。まさにミニマルデザインの真髄です。

5つ星ホテルに宿る「静かな美学」

こうしてホテル全体を振り返ると、どの空間にも共通して感じたのは、「見せないデザインがもたらす上質さ」

エントランスでは暖炉の炎が人々を出迎え、レストスペースでは選び抜かれたファブリックが調和を奏で、客室ではミニマルデザインで静を演出する。どの要素も調和し、それが ‘居心地の良さ,に静かに繋がっていました。

フィンランドで触れた美しい空間とものづくりの思想、そこで得た感性をあなたの空間に提案します

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